日常に恋する日常

地方で暮らす平均的な人

「対岸の彼女」を読んだ

※ネタバレ注意ƪ(˘⌣˘)ʃ

角田光代さんの「対岸の彼女」を読んだ。

あまりにも面白くてどんどん読めてしまった。

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調べてみるとドラマ化もされたらしい。

これほどドラマにしやすく、分かりやすい反響が期待できる題材もないと思う。

 

子供のいる共働き夫婦の悩みをそのまんま写してるから、共感できる女性は多そう。

女性が幼児の時から生涯を通して経験させられる、女性独特の人間関係の描写については、男性にはサッパリわからない世界だろうなぁ。

ただ、ここまで生々しく細かく的確に女性の人間関係の複雑さと滑稽さを表している小説に出会ったのも初めてだった。

直木賞受賞作だけど、審査員には男性もいただろう。男性から見て、この物語の受賞は一体何が決め手だったのか本当に気になる。

 

私は中学卒業まではいわゆるスクールカーストの上位にいて、気の合った友達とワイワイ過ごし、学校行事もひと通り楽しんで過ごした。

高校の出だしで友達作りのタイミングを逃し、高校3年間のクラスの思い出はほぼ記憶を失ってる。

学校行事は積極的にサボり、属するグループをどこか恥ずかしいと思って過ごしてきた。今ならそんなことを思う自分が一番恥ずかしいしみじめだし、最悪なのだけど…

この小説では、私みたいな気持ちで高校卒業までを過ごす女子の生態や気持ちが、うっすら怖くなるほど丁寧に描かれていた。

最悪な私と同じ思考をする女子たちがこの小説には当たり前に出てくるし、「私と同じ考えをしていた最低な女は、他にも当たり前にたくさんいる」と実感した。これは衝撃だった。

なんだか救われたような気もするし、スクールカーストの中で生きる思春期の女子であればそういう思考に至るのも無理はないんだよと、慰められたような、開き直れるような…

主人公たちはグループを弾かれたり自ら離れたりし、最終的には卒業まで一人で過ごすことを選ぶ。

この小説を読んだ女性の大半は、

学生時代にもしこの物語と出会っていたら救われただろうな…でも、彼女らと同じような一人の世界を選ぶことはできなかっただろうな…

と思ったのでは。

学生生活の初めから終わりまでをいわゆる「その他大勢」として過ごした女子たちの生態をこんなにもハッキリ描写する角田光代さん、すごいなと思った。

 

中学時代の親友とも高校を卒業すると疎遠になり、20代前半のそれもかなり早めに結婚した彼女の結婚式に私は呼ばれなかった。

当時は大学生だったから周りに結婚する人はいなかった。それに遠方で学生生活をしてたから、仮に招待されたとしても地元に戻って参列することは恐らく断っただろう。それでも少しはショックだったし衝撃も走った。

暑苦しいくらいに築き上げた親友っていう世界観は何だったんだろう?と。

思春期独特の…何かだったのかもしれないとしか言いようがない。

 

彼女とは毎年年賀状をやり取りするけど、「今年こそは会いたいね」と書いているのに数年間会っていない。

在来線をゆっくり乗り継いでも2時間ほどで会える距離にいるのに。

おそらく、お互い元気であればそれでいい、ということでこの先会うこともないのかもしれないと思っている。